日本人はアメリカからの独立を望まなかった 〜 三島由紀夫が叱った現代日本④
日本人は豚になる〜三島由紀夫の予言
三島由紀夫はアメリカの属国化が進む日本の将来を危惧した。2020年11月6日、アメリカ大統領にバイデン前副大統領がほぼ当選確実といわれている。これにより、多くの国は世界戦略の立て直しにてんやわんやになっていることだろう。日本を除いて。アメリカにひたすら媚び、追従するのは既定路線であるからだ。自称「保守」にも「サヨク」にも独立の気概はない。三島由紀夫は日本の行く末を正確に予言していた。作家適菜収氏が新刊『日本人は豚になる 三島由紀夫の予言』(KKベストセラーズ)でそのすべてを明らかにする。
■アメリカの属国
三島は改憲により自衛隊がアメリカの指揮下に入ることを危惧した。
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私の考へはかうです。政府がなすべきもつとも重要なことは、単なる安保体制の堅持、安保条約の自然延長などではない。集団保障体制下におけるアメリカの防衛力と、日本の自衛権の独立的な価値を、はつきりわけてPRすることである。(「三島帰郷兵に26の質問」)
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こうした思考整理ができていないから、二〇一五年の安保法制騒動のようなものが発生するのである。この問題の根本は、そもそも集団的自衛権を現行憲法の枠内で通せるか否かだった。集団的自衛権とは、「ある国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う権利」である。普通に憲法を読めば通せないことは自明だ。ほとんどの憲法学者が「違憲」と明言し、集団的自衛権の行使は「従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない」と指摘したが当然である。
仮に憲法との整合性の問題がクリアできたとしても、集団的自衛権の行使がわが国の国益につながるかどうかはまた別の問題。国益につながるなら、議論を継続し、正当な手続きを経た上で、法案を通せばいいだけの話。
ところが安倍晋三は、お仲間を集めて有識者懇談会をつくり、そこで集団的自衛権を行使できるようにお膳立てをしてもらってから閣議決定し、「憲法解釈の基本的論理は全く変わっていない」「アメリカの戦争に巻き込まれることは絶対にない」「自衛隊のリスクが下がる」などとデマを流し、法制局長官の首をすげ替え、アメリカで勝手に約束してきて、最後に国会に諮り、強行採決した。
要するに順番が逆。集団的自衛権が必要であったとしても、国を運営する手続きを歪めてしまったら、大変なことになる。集団的自衛権の行使が必要かどうかという話と、現行憲法に照らし合わせて合憲といえるかどうかはまったく別の話なのに、それが理解できない自称保守も散見された。
仕舞いには首相補佐官の礒崎陽輔が「法的安定性は関係ない」と言い出した。
こうした国の危機に対し、自称保守は「集団的自衛権は国連憲章で認められているじゃないか」とか「そもそも日米安保は集団的自衛権だ」とか「砂川事件の最高裁判決が」とか「これまでも政府は憲法解釈をしてきたのになぜ今回だけダメなのか」とか「尖閣諸島が危ない」とか「それなら自衛隊だって違憲だろ」とか頓珍漢なことを言って騒いでいた。
一方頭の悪い左翼は集団的自衛権の行使の是非に問題を矮小化し、「戦争反対」「9条を守れ」などと本質からずれたことを言っていた。
安保法制問題の本質は、時の政権がルールを都合よく変えたということである。国家に攻撃を仕掛けたということである。現実を把握できていないのだから、粛々とおかしな法案が通っていく。こうして、花畑左翼と自称保守は共犯関係になった。思考停止に思考停止が重なり、国は大きく傾き始めた。
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